ORIGIN & CRAFT
美しい抹茶は、光を遮って育てられる。

京都・宇治の茶畑には、少し不思議な風景があります。
新しい茶葉が育つ春。
陽の光を浴びて育つはずの茶畑が、黒い覆いや、よしずと藁で覆われていきます。
植物には光が必要なのに、なぜわざわざ日光を遮るのでしょうか。
その理由を知ると、一杯の抹茶が少し違って見えてきます。
光を遮ることで、生まれる味がある。
抹茶の原料となる茶葉は、「碾茶(てんちゃ)」と呼ばれます。
その栽培に用いられるのが、「覆下栽培(おおいしたさいばい)」という方法です。
新芽の成長に合わせて茶園を覆い、日光を制限する。
こうすることで、うま味のもとであるテアニンが渋みのカテキンに変わるのを抑え、うま味を感じやすい茶葉が育ちます。
抹茶の深い緑色や、独特の風味も、こうした栽培方法と深く関わっています。
何かを加えるのではなく、あえて光を減らす。
その手間が、お茶の味わいを変えているのです。
よしずと藁がつくる、茶畑の屋根。
宇治には、「本ず覆い」と呼ばれる伝統的な栽培方法があります。
茶畑の上に棚を組み、よしずを広げ、さらに藁で覆っていく。
現代では遮光ネットも広く使われていますが、本ず覆いは、宇治の茶づくりを象徴する技術のひとつです。
茶葉の様子を見ながら、光の当たり方を調整する。
収穫の時期を見極める。
摘み取った葉を蒸し、揉まずに乾燥させ、茎や葉脈を取り除く。
そうしてできた碾茶を、石臼などで細かく挽くと、ようやく抹茶になります。
一杯のお茶の向こうに、これだけの工程がある。
そう考えると、茶碗の中にある緑色が、少し特別なものに思えてきます。
宇治茶は、宇治だけで採れるお茶ではない。
実は、もうひとつ意外なことがあります。
一般に「宇治茶」と呼ばれるお茶は、必ずしも宇治市で育てられた茶葉だけを使っているわけではありません。
宇治茶には、京都・奈良・滋賀・三重の4府県で生産された茶葉を、京都府内の業者が宇治に由来する製法で仕上げる、という定義があります。
宇治茶の文化は、ひとつの町だけで完結しているわけではないのです。
産地の自然条件と、長い時間をかけて磨かれた製茶技術。
その両方が、宇治茶という名前を支えています。
一杯のお茶がつくる、静かな時間。
茶道で大切にされてきたのは、お茶の味わいだけではありません。
茶碗を手に取る所作。
お湯の音。
茶室に流れる時間。
目の前にあるものと、静かに向き合うひとときです。
JAPONISMの「MATCHA」は、そんな日本のお茶の文化から着想を得ています。
忙しい毎日の中に、ほんの少し静かな時間をつくること。
香りを通じて、日本の風景を思い浮かべること。
茶畑の覆いの下で育つ新芽のように、目には見えない時間や手間にも、美しさがあると思うのです。



